平成21年5月21日より裁判員制度がスタートし、名簿記載通知が送付されるのは今年で10回目となります。これまでにこの名簿記載通知を受け取った裁判員候補者は、合計で約243万人となり、約51人に1人という割合となっています。先日、来年の裁判員候補者に対して通知が発送されましたので、この通知を受け取った場合に求められる対応などについてとり上げましょう。
1.裁判員制度とは
そもそも裁判員候補者とは、市町村の選挙管理委員会が「くじ」により作成した名簿に基づいて、裁判所ごとに作成された裁判員候補者名簿に登録された者のことを言い、裁判員に選ばれる可能性がある者を指します。この裁判員候補者名簿に登録される人数は、予想される裁判員裁判対象事件の数などによって毎年変動しており、平成30年分の名簿に登録される人数は全国で約230,600人、有権者全体に占める割合は約461人に1人と発表されました。今回は平成30年1月1日から同年12月31日までの間に対象となる裁判員候補者に対し、平成29年11月14日より通知が発送されています。
2.裁判員候補者となった後の流れと企業に求められる対応
従業員が裁判員候補者に選ばれた場合であっても必ずしも裁判員となる訳ではなく、実際に裁判員を選任する必要が出てきた際に、裁判員候補者に「裁判員等選任手続期日のお知らせ」が送付されることになっています。実際、この「裁判員等選任手続期日のお知らせ」を受け取った時点で業務の都合等で裁判員となることが難しいケースが考えられ、このとき、会社にどのように対応したらよいのか相談が寄せられることもあるでしょう。
これについては、具体的な事件が起訴された後、「裁判員等選任手続期日のお知らせ」に質問票が同封されることになっています。送付された時点で裁判の日程が決まっていることから、その日程を前提とした辞退事由など(事業上の重要な用務で、自分で処理しないと当該業務に著しい損害が生じるおそれがある事情の有無や、重い疾病又は傷害により裁判所に行くことが困難な事情の有無など)を回答することになっており、辞退が認められるかが判断されることになります。そのため、従業員から相談があった際には、この質問票を必ず提出するように伝え、辞退が認められなかった場合には上長や現場と調整し、従業員が安心して裁判員として役割が担えるようにすることが求められます。
今年10月に、労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)が改正され、従業員が公民権の行使または公の職務の執行をできるための制度等を設けるよう検討することが企業に求められています。裁判員制度のための休暇制度もこれに該当することから、休暇制度を設けることについてこの機会に検討してみてはいかがでしょうか。
■参考リンク
最高裁判所「11月14日,裁判員候補者名簿に登録された方に名簿記載通知を発送します。(2017.11)」http://www.saibanin.courts.go.jp/topics/13_11_12_meibo_hassou.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。