労働者の健康保持の観点から産業医の重要性は年々高まっていますが、今回、労働安全衛生法施行規則が改正され、2017年6月1日より、現状、毎月1回求められている産業医の作業場等の巡視が、一定の要件を満たした場合には2ヶ月に1回とすることが認められます。そこで、今回は産業医の役割と2017年6月からの法改正の内容について確認しましょう。
1.産業医の役割とは
企業は従業員に対して、安全で健康な状態で働けるよう職場環境を整備することが求められていますが、その中では医学に関する専門的な知識が不可欠となります。そのため、常時50人以上の従業員を使用する事業場では、産業医を選任することが義務づけられています。そして、この産業医は以下の職務を行うことになっています。
(1)健康診断、面接指導等の実施およびその結果に基づく従業員の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理等、従業員の健康管理に関すること。
(2)健康教育、健康相談その他従業員の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
(3)労働衛生教育に関すること。
(4)従業員の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置に関すること。
そのため、産業医は従業員の健康を確保するため必要があると認めるときは、企業に対して、従業員の健康管理等について必要な勧告をすることができるとされています。また、産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、従業員の健康障害を防止するために必要な措置を講じなければならないとされています。
2.2017年6月からの改正内容
このような役割が産業医に求められていますが、近年、過重労働やメンタルヘルス不調等の様々な対策が求められ、産業医が対応すべき業務が増加しつつあります。そのため、今回、労働安全衛生法施行規則が改正され、少なくとも毎月1回行うこととされている作業場等の巡視について、企業から毎月1回以上、産業医に以下の2つの情報が提供されている場合で、企業の同意があれば、作業場等の巡視の頻度を少なくとも2ヶ月に1回のペースとすることが可能になります。
(1)衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場等の巡視の結果
(2)(1)に掲げるもののほか、衛生委員会等の調査審議を経て企業が産業医に提供することとしたもの
このほかにも同じ6月より2つのことが企業に義務付けられることになっています。1点目は、健康診断の有所見者について、医師等が就業上の措置等に関する意見具申を行うにあたり必要となる従業員の業務に関する情報を、企業がその医師等から求められた際、これを提供しなければなりません。次に、長時間労働となっている従業員の情報提供として、毎月1回以上、一定の期日を定めて、時間外労働(休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合にその超えた時間数)が月100時間を超えた場合、その従業員の氏名と時間数を産業医に提供しなければなりません。
今回の改正をきっかけに、企業は産業医に対してどのような役割を求めるのか考えを整理し、従業員が安全で健康な状態で働けるように体制をつくっていきましょう。
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。